貢ぐは馬鹿だが幸である

ブロガー、フリーライター

ある日、同級生がもしも有名人になっていたら

私が、まだ中学生だった頃。

 

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私は、漫画家になりたいとか作家になりたいとか本気で思っていた。

 

ノートを少ないお小遣いの中で買っては、色んな漫画や日記を毎日書きまくっていた。

 

その頃は、確か学校の読書感想文が2年連続で入選してたと思う。

 

他にも、美術の授業でタヌキのオブジェを作っていたら、そのまま入選して展覧会に飾られた事や、絵を描けば周囲の人から褒められる事も多かった。

 

漫画家目指してる友達同士で、お互いの漫画を見せ合っては楽しんでいた。

 

そんな感じの、人生で一度は二度は誰にでもありそうなエピソードだけで、「私、漫画家になれるんじゃないの?」と本気で思っていた。まさに、井の中の蛙大海を知らず状態だったのである。

 

賞は、時によって人の心を惑わせ過信させてしまう事もある。どんな事があっても、謙虚な心を忘れてはいけないなと思う。調子に乗って自らを冷静に見れなくなる時ほど、怖いものは無いのだ。

 

ある日、私の読書感想文が入選し校内の文集に掲載される事になった。

 

しかし、この感想文。実は、本を一切読んで書いていない。なんと、巻末のあとがきだけ読んで感想文を書いた。

 

理由は、部活も忙しかったし本を読むのが面倒くさかったから。

 

「たった3分本を読んで感想文書いて選ばれるなんて、私ってもしかして天才なんじゃないの?」と、ここでまた過信する。私は、読書感想文界のウルトラマン。3分読んだら、読書感想文が書けちゃう。円谷プロもビックリよねって思ってた。

 

(本当に天才なのは、あとがきを書いた武田鉄矢かもしれないのに・・。)

 

読書感想文がもし入選したら、もしかしたら「あの子、めちゃくちゃ感想文上手いじゃん!」ってクラスのイケメンから声かけられるかな。

 

ラブレターとか貰えるかな。友達から、凄いじゃんって褒められるかな。友達100人出来るかな。

 

正直、邪な欲望しか浮かばなかった。

 

今思えば、読書感想文が入選した所で急にモテるようになったり友達増えた人の話など聞いた事もない。

 

これじゃー、辻仁成さんクラスなら100人斬りになっちゃうよね。又吉さんのルックスなら、火野正平クォリティになってたかもしれない。東野圭吾さんなら、日本のドンファンになってたかもしれない。

 

とりあえず、読書感想文が入選したら何か変わるかもしれないと思ってたけど。結局何も変わらなかった。

 

っていうか、読書感想文が書いてある文集自体に興味を持つ男女自体が少なかった。

 

当時の中学生が、興味を持つこと。

校内のイケメン、美女か、ヤンキーか、誰かさんの胸がデカイかとか、誰が付き合って別れたとか、塾サボりたいとか、キムタクか福山雅治のキスシーンについて事くらいだろうか。

 

私みたいな地味で目立たない平和主義者の女が、読書感想文を書いて入選したところで、結局何も変わる訳はないのだ。

 

しかし、そんなある日の事だった。

 

1人の女の子が「あなたの文集みたよ!凄く文章上手いね!凄いなぁと思ったよ!」と、絶賛してくれた。

 

普段はクールな美女って感じで、他人に関心なさそうと思っていた人だったので、そりゃー心臓が飛び出るほど嬉しかった。だから、いつまでも覚えてるんです。多分、墓石に入る直前まで忘れないと思います。

 

だって、彼女ってお世辞で褒めたりしないような人だもの。だから、余計嬉しかった。

 

彼女は、いつも人の事をどうこう言う事が嫌いな人で、静かに黙々と努力している人だった。私の中のイメージは、とにかくカッコいい人だった。

 

部活が一緒だったけど、元々なんでも凄くできる人だった。天は二物も三物も与えるというけど、本当に何でもソツなくこなしている感じだった。

 

しかし、よく見ると部活でも30分前には練習場所に来て1人黙々と練習する人だった。

 

私のような、「部活でイケメンに会える」という事くらいしか興味を持っていない人とは訳が違った。何でもできる人ほど、影で人一倍努力しているんだと思った。

 

そんな彼女とは部活の縁もあり、ある一定の時期に自転車で一緒に学校通っていた。多分、その時に言われたのかもしれない。

 

その後わかった事だけど、実は彼女も感想文に入選していた。

 

読書感想文は、二人で同時入選だった。だから、彼女も読んでくれたのかもしれない。

 

そんな訳で、私も彼女の読書感想文を読む事にした。

 

しかし、読み始めた途端。思わずゴーゴンに見つめられたかの如く固まってしまった。

 

読書感想文に溢れる言葉達は、ほぼ自分の思いを投げつけるかのように存在していた。文章なのに、ありあまる躍動感と疾走感でまるで生きてるみたいだった。

 

彼女の個性が上手く生かされていて、とても生き生きしてる。

 

とにかく、この人は上手く書こうとせず、読書感想文を書いててとても楽しかったんだろーーなってのが伝わってきた。

 

楽しめるって事は、余裕あってこそなので、おそらく本当に実力ある人なんだと思った。余裕ないと、何事も楽しめないですからねぇ〜。

 

「私は、本の事を一切書こうと思わなかった。自分の思いを、全てぶつける感じで書いたの」と、ニコニコしながら語る彼女。

 

疾走感が凄くて、一気に読めてしまう彼女の文章を読んで、正直「何だこれは。」と思った。

 

私が、最初に彼女の読書感想文を読んで思った感情は一言「悔しい」。

 

彼女の読書感想文は、ダイナミックで思い切りがよく見る人を引き込むような文章。

 

数回見ただけだけど、今でも忘れられないような鮮烈なインパクトがあった。

 

私の読書感想文は、どちらかというと綺麗に上手くまとめようといった感じ。

 

一見ソツなくみえるが、彼女のと比べると小さくまとまっていた。

 

多分「あー、綺麗にまとまってるねー」って感じだけど、一度見たら忘れられるような感じ。

 

つまり「可もなく不可もなく、武田鉄矢のあとがきを綺麗にまとめて書いただけの読書感想文」でしかなかったのだ。

 

正直、人の文章など比べるものではないのかもしれない。

 

けど、同じ入選でたった2つの感想文が文集に並んでいたら、そりゃーー比べますよね?

 

私はこの時、きっと今後どんなに努力しても彼女を超える事は出来ないだろうと悟った。

 

読書感想文、一緒に入選したね!と、彼女に言われたあの日。

 

なんで、彼女と同じだと少しでも思っちゃったんだろう。ちっとも違うじゃんか。

 

何余裕こいて「ああ、あれね。ありがと。」みたいなスタンスで応答してしまったんだろうか。

 

自分の良さもわかった上で表現する事ができるだけでなく、人の良さもきちんと褒められる彼女は、この時点で既に私よりずっと大人だったのだ。

 

彼女は、本当の天才じゃんか。

 

彼女の後に記載された私の文章が、物凄く子供じみて見えてしまった。

 

非常に恥ずかしくなり、穴を掘って地獄の果てまで埋まり続けたいとさえ思った。

 

「頑張れば、いつかきっと夢は叶う」という言葉が好きだったけど、ものすごく嫌いになりそうだった。

 

あの時。後から、「私も読んだよ!凄かった!」って褒めるべきだっただろうか。

 

もしここで素直に褒める事が出来たなら、きっと私はもっと人として一人前になれたのではないだろうか。

 

負けず嫌いな私は、負けも人も認められなかったのだ。そういう意味でも、ずっと私は子供だったのだ。

 

私の読書感想文をキラキラした瞳で褒めてくれた彼女の事を、結局最後まで私は褒める事が出来なかった。

 

悔やんでいる事といえば、あの時もっと素直に人を褒める事が出来れば良かったという事だ。

 

あれから数年後。

 

彼女は、とある文学賞に入選し今では作家として活躍していると知った。

 

ほんの少し前に目指してた事があったけど、作家なんて1000人に1人なれるかなれないかのレベルだろーし。どーせ無理だと諦めた。

 

その数年後だった。

友達から、彼女が作家になった事を知った。それも、作家どころか大きな賞も獲得していた。

 

図書館で、彼女の本を借りて読んだ。あの頃の、読書感想文を読んだ時の想いが蘇る。

 

まっすぐ正直な思いを吐露し続ける彼女はそのままだった。でも、幾分か進化を遂げて更にパワーアップしていた。嬉しくて、思わず涙が出そうだった。

 

時々、ふと彼女から褒められた時の事を思い出す。

 

今となっては、有名作家になってしまった彼女が自分の文章読んで褒めてくれるなんて、光栄な事だ。

 

もう二度と、そんな日は来ることなんてないだろう。

 

そして、あの時ちゃんと彼女の感想文に対して感想を素直に話せていたらなって後悔してる。

 

この年になり、ようやく気づかされた事がある。

 

人は生きていくうちに、一体どれだけ素直な気持ちで人と接する事ができるのだろうか。人の事を素直に認める事、褒める事、話す事ができるのだろうか。

 

ひとつひとつ増えていくうちに、少しずつかもしれないけど、ちょっとずつ「人」として歩んでいるような気がしている。

 

私は、負けず嫌いな上に、人の事を素直に認められない分、損も沢山してきていると思う。

 

これから、一体どれだけ素直な気持ちを忘れられないでいるだろうか。

 

人に対して素直でいられるのだろうか。

 

それが、今後生きていく課題なのかもしれない。

 

今でも、時々彼女のブログを読んでる。

 

天才の彼女も、ずっとずっと努力してる。成功してからも、相変わらず悪戦苦闘を繰り返しているけど、女1人でずっと戦い続けている。

 

そんな彼女のブログを読んで思う。

 

あー、私は凡人だからこそ。更に頑張らないといけないなぁと気づかされる。

 

上手く言えないけど。

応援してます。

 

あなたが、ここを見る事はおそらく無いだろうけど。

 

これからも、頑張ってちょ。